原種との決戦を終えて、木星圏の危機を救ったギャラクシィ・ユニオンズ。
これで残る敵勢力はヘイムダル・ガッツォーごと行方をくらましているオデッサと、ヴァル・ファスクのネフューリアのみ。
(オメガはオデッサに組しているので一緒にしている)
原種との戦いの後、命が突如倒れると言うアクシデントがあったが、
激戦による過労と言うことで、暫く安静することに。

そして、おそらく最後の作戦になるであろう『その時』に備えるため、
ギャラクシィ・ユニオンズは「白き月」と共にファルガイアへと向かっていた。

その途中、突如エルシオールにメッセージが入る。


闇遣い―――リューレイス・ヴィンスレットに伝えたい

全ての決着をつける為に風の海と星の海の狭間に待つ

ラルミィ・トゥラウム・レスタリア


暗号化すらもせず、堂々とさらす辺り、人によっては逆に怪しまれるくらいのバカ正直な内容だったが、
タクトは、リューンにこのことを伝え、そして出撃許可も与えた。

そして、リューンはセレスティに乗り込み、出撃する。
最後の記憶のひとかけらを思案しつつも。

第32話「Fargaia Lovers 前篇 -新たなる縁-」

惑星ファルガイア…衛星軌道すれすれの宙域。
そこに浮かぶは、鋼鉄の騎士ヴェルセクトと闇なる銀河の翼セレスティ。
星の海に浮かぶファルガイアのふちから太陽の光が輝きだす。
ふとした切欠で互いにぶつかり、互いに手を取り合った二人。
来るべき時のために、決着のときが来たのだ。

「来たか…!」
「ラルミィ…」

なぜ戦わなければならないのか…それは互いに感覚的に知っていた。
新たなる道を歩むには、それまでにしてきたことをきっちりと終わらせなければならない。
そして、二人が唯一終わらせていなかったこと…それは、互いの全てを賭けての決着であった。

示し合わせたわけでもなく、不意に二人が同時に具現陣を展開した。
神具リュストゥングを呼び出すための魔法陣である。

「月光の大太刀、エクリプス!!」
「彗星の欠片、スターティア!!」

セレスティの右手には身の丈あるほどの大太刀が、ヴェルセクトの四肢には白金に輝く装具が現れる。
ラルミィ「突っ込むぞ…ヴェルセクト!」 『スターティア・ブーストオン』
ヴェルセクトに内蔵されているインターフェイスに伝えるや否や、
ラルミィはスターティアの力によって光の如き速さでセレスティに突撃する。
リューンはセレスティのエクリプスでヴェルセクトが繰り出したキックを真っ向から受け止めた。
しばらくの競り合いの後に、すぐさま距離をとる二機。
そして同時に起爆し、真正面でのリュストゥングのぶつかり合いとなった。
片方が繰り出したエクリプスの太刀筋をスターティアで受け流し、
片方が畳み掛けるスターティアによる徒手空拳をエクリプスの腹部でうまく打点をずらす。
互いに決定打にいたらず、互角の戦いを見せていた。
ぶつかり合いの末に、2機は互いにリュストゥングの必殺技を放った。
ヴェルセクトは自らが彗星となりて全てを貫く。セレスティは二振りの大太刀を振りぬいて全てを断ち切る刃を放つ。
これも正面衝突して威力が爆散した。

爆炎が収まり、黒い煙に包まれた2機。
リューンは、エクリプスを具現陣に戻し新たなリュストゥング…冥府の天鎚「バルセルト」を引き出す。
だが、武器を変えていることは向こうも同じだということが背後の気配で直感した。

死角となる背後から、2体1対の鋼の翼…第3のリュストゥング「ガルツベルン」が襲い掛かっていたらからだ。
リューンは、バルセルトのスラスターをフルブーストして錐揉み回転するかのように紙一重でそれをかわす。

高速の体当たりによる攻撃がかわされたガルツベルンだが、すぐに向きを変えてその小さな口から閃光を放つ。
ビームは直線的だがガルツベルンそのものがすばやい機動で撃ち続ける為、
半ばドックファイトに近い動きでかわし続けるセレスティ。
だが、リューンは途中で方向転換しバルセルトを構える。そしてそのままヴェルセクトへと突っ込んだ。

自分に突っ込んで来ることに気づいたラルミィは、すぐさまガルツベルンを「自分に」呼び寄せる。
そしてすぐさま起爆させ―――――そのときにバルセルトとガルツベルンがぶつかる。
この賭けはラルミィに軍配が上がった。起爆形態では翼であると同時に盾となるガルツベルンが、
バルセルトの一撃を防いだのだ。

だが、リューンも負けじとバルセルトを起爆。
強化したバルセルトのスラスターで少し距離の離れたところにある衛星のデブリにまでヴェルセクトを押し込んだ。
そして再び互いの必殺技が正面衝突し、その衝撃波は衛星のデブリを完膚なまでに破壊した。
が、衝撃波の中心にいた2機はいまだ健在であった。

もはや互いにリュストゥングはこの戦闘では使用不可能となり。
残された手は互いが初めから持っている…幾度もの戦火を共に潜り抜けてきた相棒のみであった。

ヴェルセクトには空牙を。セレスティにはフォトンマチェットと、アサルト・ソーサルガンを。

お互いに武器を構えて対峙する中、リューンはふとラルミィに話しかける。
「ラルミィ。最初に対峙したきっかけはなんだったんだろうな…」
「…確か、まだ私がギガノスの所属だったとき…だな。このヴェルセクトを強奪して…追撃をかわす戦いだった」
「だが…ヴェルセクトは…お前を待っていたのかもしれない…
それはセレスティから生み出されたただのデットコピー機ではない。
焔の災厄より以前の古代ファルガイア人が、来るべき戦いの為に備えて託されたもの…
悠久の古に生まれた『神と人の間に生まれし者』が残した遺産の一つなのだ」
「…知っている。我が家系に代々伝えられる伝承に、その遺産の話もあったからな。
だからこそ、それとめぐり合った私は強くならねばならなかった。ファルガイアを守る剣となるために…」
「……ファルガイアだけじゃない。この銀河を守るための剣だ」
「ッ!」
驚愕の表情をとるラルミィ。
「そして、かの者の遺産はひとつではない…剣は一振りだけではだめだ。だから…!」
「わかっている! 私一人では、出来ることに限りがあることは…これは、私の我侭だ…最後まで付き合ってほしい」
「…わかった。これで決めるぞッ!!」

2人は愛機に最後の渇を入れる。
そして愛機は二人に応えんとする。

二人の想うモノは一つ。「すべての思いを相手にぶつける」のみ。

そしてこの戦いは、距離を離して待機しているギャラクシィ・ユニオンズの者達も、固唾を呑んで見守っている。
リューンと共に戦ってきたARMSのメンバーや、ラルミィと行動を共にすることが多かったマイヨたちも…

そしてほぼ同時に、2機が仕掛け始める。
リューンのセレスティがメビウス・リアクターを振るわせて力をため、
ラルミィのヴェルセクトが二振りとなった空牙を一つにする。

先に準備を終えたのは、セレスティのほうだった。
リューンは、先にアサルト・ソーサルガンのチャージに全てを回し、通常より遥かに早くチャージを終えた。
チャージの余剰分はフォトン・マチェットにまわし、すぐさまアサルト・ソーサルガンを構える。

メビウス・リアクターの止め処無く溢れる力が収束し、アサルト・ソーサルガンの銃口から爆ぜた。
「チャージ・クレスト…オーヴァードース・シュートッ!!」(Over Dose…『一線を越える』。転じて『限界突破』)
若干赤黒い閃光の嵐がヴェルセクトに襲い掛かるッ!

しかし、ラルミィは静かに笑みを浮かべ、叫ぶ。
「荒野の星よ…今こそ我と汝との絆を力にする時…! ヴェルセクトよ、真の姿を我の前に示せ!」

ヴェルセクト・ヴァージニアス…リヴァレイションッ!!

ラルミィはそう叫び、それと同時にその声は爆音にかき消される。

だが、閃光と爆炎の中から現れたのは、エメラルドグリーンのラインが入った鋼の翼と装甲を纏った、
真なるヴェルセクト…ヴェルセクト・ヴァージニアスであった。

「……ッ!? まさか…!」
リューンは、予測の斜め上を行く展開に動揺を隠し切れない。
それと同時に、新たな希望のようなものが心の底からわきあがってきた。

「リューレイス……これが私の残していた最後のカードだッ!!」
そう言ってラルミィは、新たな具現陣を展開し、一振りの剣の柄らしきものを引きずり出すッ!

「これが、ヴェルセクトが振るうことが出来る最強の剣…星護剣エクイテス!」
刹那、ダイゼンガーの参式斬艦刀と互角に渡り合えそうである巨大な光刃がエクイテスの柄から発せられる。
「剣の守護獣と同じ名前の剣か…!」
「これで決めるッ! いっけぇぇぇぇぇッ!!」

巨大な光刃がセレスティに向かって振り下ろされる。
リューンは、残っているエネルギーをすべて防御フィールドに回し、グラビトン・セイバーで受け流そうとする。
しかし、それはもはや剣の太刀筋ではなく、巨大な光の柱であった。
そんなものが通常の剣のサイズで受け流せるモノではなく、セレスティはほぼ直撃する。

フォトン・マチェットがエクイテスの光に触れた瞬間、眩い閃光が辺りを包む。

一瞬とも永遠ともいえる閃光が収まったとき、ヴェルセクトはエクイテスの刀身を消す。
セレスティのいた場所は、太陽と同軸線上にいるためかうまく見えない。

徐々に目が慣れていくラルミィ。そこで彼女は信じられないものを目にした。

そこには、ボロボロの状態でありながらも、まだ稼動しているセレスティの姿があった。

「エクイテスの一閃を…すべて受けきった…のか…ッ!」
「ギリギリだったがね…オマケに、最後のひとかけらが漸く揃った。あの光から放たれる波動から…」
「…なんだとッ!」
「『神と人の狭間に生まれし者』の伝承は、ファルガイアのみならず、トランスバールにもあったこと。
そして、その伝承に…自分が関係していることも…な」
「リューレイスが…!」


悠久の古に、神と人の狭間に生まれし命あり

かの命、人と共に生きる為に心無き神々に弓引く

数多の人々の想いを連ね、心無き神々を滅する



「ここまでが、トランスバールの白き月に伝えられている伝承だそうだ」
「ああ。ファルガイアにも古い文献になればたびたび見られる一節だ」
「だが、この伝承には続きがある」


心無き神々、かの命の悪意を読み取り、自らの力と成して総ての源なる混沌に宿る

かの命、その混沌を自らの総てを投げ打って封じ、果てしなき楽園の礎とならん


かの命の心、魂の束縛より解き放たれん

かの命の魂の光なる半身、虚空の果ての始まりの地にて、人たる命となりて生誕す

かの命の魂の闇なる半身、荒みし荒野の地にて、人ならざる命となりて生誕す

かの命の魂より生まれし者、永久(とわ)なる無限の鼓動を宿す銀河の翼をその身に纏い、滅びの総てを滅する者なり



「ッ!! まさか…」
「そう…俺は、かの命の魂の闇なる半身の生まれ変わりだったのだ……!」

その真実に、ラルミィだけでなく、ギャラクシィ・ユニオンズにも衝撃が走る。

「俺は、滅びの総てを滅する宿命を受けた銀河の翼の片割れ…だから、負けるわけにはいかないッ!」

そう言ってリューンは、セレスティと精神を完全にリンクさせ、メビウス・リアクターのフルドライブを敢行する。

(ファルガイアは強い意志や想いが他の星に比べて具現化しやすいという特徴がある…
メビウス・リアクターの力と自分の想いに総てをかける!)

人ならざる命であっても、強い想いは人に負けない自身があるリューンは一気に気勢を爆発させるように、
気合を入れるような叫びを挙げたッ!

その想いが通じたのか、フォトン・マチェットとアサルト・ソーサルガンが光となって一つとなる。
そしてリューンは、確信めいた思いを抱きつつ、その光に手を突っ込んだ。

そして引きずり出されたのは、鋭角的な片刃の刀身が特徴的である巨大な銃剣だった。

「これが…セレスティの新たなる武器、アルシャード・ルティアス!」

リューンは、とっさに思いついた名前を叫び、銃剣アルシャード・ルティアスを構える。
メビウス・リアクターのエネルギーはもとより、周囲に拡散した諸々のエネルギーまでもが、
アルシャード・ルティアスの刀身に収束する。
そして時と共に集ってゆくエネルギーは速度と量を増してゆく。
中には、ヴェルセクト・ヴァージニアスのエクイテスのエネルギー残滓までもがその光の収束に混ざっている
「な、エクイテスの力まで……それは反則ではないのかッ!!」
「反則ではない…俺のもつ闇の力は、器の力……深遠たる巨大な器には、無限の力すらも受け入れられるものだッ!
これが俺の総てを載せた一撃ッ!」

そう叫んだリューンは、アルシャード・ルティアスを一旦肘で軽く引き寄せ、そして突き出すように放った。
そのモーションは、かつてのエオニア戦役で活躍した、空神悠吾が操るリヴォウルトの最強必殺技と瓜二つだった。

「メビウス・ダークスマッシャ―――――ッ!!」

轟音と共に青白い光が混じった赤黒い波動がラルミィのヴェルセクトを襲った。
ファルガイアの星の海を貫く膨大な波動。ラルミィの視界は、総て闇に染まる。
だが、その闇に恐れを感じ取ることはなく、むしろ安らぎを感じていた。

そして、ラルミィは夢を見た。

騎士の家系として生まれ、修練は苦しくとも幸せだった日々。永遠でありたかったあの頃。
かつて持っていたはずのそれらは、戦乱という災厄によって形を失い、自分の手から滑り落ちていった。
自分の力の無さを嘆いた。だから力を求めた。誰よりも大切なものを守りきれるように。
その想いを抱えてギガノスに入り、ただひたすらに守るべき力を求め続けていた彼女。

だが、孤独の力は儚く脆い。

それに気づき始めたのは、ヴェルセクトと出逢ってからだった。
出会いの仕方はともかく……ヴェルセクトに内蔵されている人工知能らしき存在は、
孤独だったラルミィを影ながら支え続けてくれた。
時々自分のコンプレックスに突っ込まれることにイラつくが、それでも頼もしい相棒となっていた。

そして、孤独であることの限界と、自分のプライドとの葛藤と戦っていた。
こんな自分に、大切なものを掴み取ることが出来るのか。
それは自分で決めなくてはならないことだった。

「……ミィ…ラ…」

微かに聞こえる声。
それは、常に宿敵として戦い、そして不思議な感情を抱いてしまうものの声。

「ラ…ミィ…ラルミィ!!」
「ッ!」

その声は、程なくしてはっきりと叫び声として認知し、目を覚ます。

「ラルミィ! 手を掴めぇ!!」

ラルミィは、とっさにヴェルセクトの手をセレスティに手に向けて伸ばした。
そしてリューンは、その手を掴むことができ、何とかファルガイアの大気圏から引っ張り出す。

実は、最後の攻撃を食らった後、ラルミィは一時的に意識を失い、
ヴェルセクトはそのままファルガイアの大気圏に落ちてしまうところであった。

「大丈夫か…?」
「あ、ああ……ありがとう…リューレイス」
「無事でよかった。あの技は即興で編み出したものだったから、威力が拡散して、直撃にはならなかった…
最も、尋常じゃない衝撃波は食らってしまったがな」
「そうか……この勝負、私の負けだ」
「…ああ。これで、俺たちを縛るものは無くなった。一緒に戦おう…!」
「…うん!」

この時、ラルミィは気づいた。自分の心の中で燻っていた何かの正体を……
そして彼女はリューンに見られ無いように、そっぽを向きながら、静かに嬉し涙を流した。

こうして、リューンとラルミィの戦いは終わり、二人は共に戦うことを決意した。
リューンは、エルシオールに通信を送り、迎えに来てもらうように頼んだ。
その時、ラルミィが大事なことを忘れたとつぶやき、通信で伝える。

「実は、御土産を持ってくることが出来た。この戦いに決着をつけられる鍵だ」と。


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