ギャラクシィ・ユニオンズがファルガイアにて原種、ネェル・グノーシス、マリーメイア軍と戦っている頃。
トランスバールに向かっているエルシオールとアマテラス……

司令官室にいるタクトは大いに頭を悩ませていた。
何としても情報がほしいのだが、ノアが完全に「取り付く島もなし」と言う状態のため、完全に足踏み状態であった。
そんな中、タクトとノアの両人を心配してミルフィーがやってきた。
タクトはミルフィーにも如何すればノアが話してくれるのかたずねてた。
するとミルフィーはこう答えたのである。

ミルフィーユ「う〜ん…あたし、思うんですけど…今のあたし達と同じように、
 ノアさんもきっと、不安なんだと思います」
タクト「ノアが…不安?」
ミルフィーユ「だって…ここにはノアさんのお友達が、一人もいないんですもん。
 ひとりぼっちでエルシオールにやってきて、知らない人たちから「話せ〜、話せ〜」って言われて…
 あたしなら、きっと泣いちゃって、話なんかできないです」
タクト「そんなつもりは無いんだけど……確かに、ノアの気持ちまでは考えてなかったな」
ミルフィーユ「まずは、ノアさんとお友達になりましょうよ。そうすれば、自然と話してくれると思います」
タクト「お友達になる…か。でも、どうすればいいのかな?」
ミルフィーユ「う〜ん、そうですねぇ……あっ! あたし、いいこと思いつきました!
 タクトさん、ちょっと待っててもらえますか? 準備が出来たら、ノアさんのところへ一緒に行きましょう!」

で、30分後。
タクトは先にノアがいるクリスタルが安置されている倉庫にいた。
程なくして、ミルフィーがやってくる。
ミルフィーユ「タクトさん、お待たせしました。準備完了です!」
タクト「あれ? 準備って、なんか持ってくるんじゃなかったの?」
ミルフィーユ「ここより、あたしの部屋の方がいいかなって思って。さぁ、ノアさんを招待しましょう!」
そういって、ミルフィーはクリスタルをドアノックするかのようにガンガンと軽く叩く。
ミルフィーユ「ノアさん、こんにちわー! ちょっといいですか?」
ノア「…なに? あんた達に話は無いって言ったはずよ」
ミルフィーユ「あのですね、お茶とケーキを用意しているんです。一緒に食べませんか?」
ノア「は?」
思わずタクトは凍りつき、さすがのノアも疑問符を浮かべる。
ノア「あたしもなめられたものね。物で釣ろうだなんて」
ミルフィーユ「やだなぁ、そんなのじゃないですよ」
ノア「じゃあ、どういうこと?」
ミルフィーユ「きっと食べたいだろうなと思って。ケーキが嫌いな女の子なんていません」
ノア「それが…理由?」
ミルフィーユ「はい! それにノアさんって、黒き月の中で、ずーっと一人で眠ってたんですよね?
 ご飯とかちゃんと食べてました?」
ノア「食事? そんなもの、コールドスリープしてるんだから必要なかったわよ」
ミルフィーユ「えっ!?」
ノア「必要な栄養分は、アンプルで補給できるから困らなかったし」
あくまでも事務的に答えるノア。だが、ミルフィーは一気にまくし立てた。
ミルフィーユ「いけません! おいしいごはんは心の栄養です! お薬じゃ、心はおなかいっぱいになりません!
 わかりました! あたし今から、ノアさんのご飯をつくります!」
ノア「いや、あの……」
いきなりの展開でノアも思わずたじろく。
ミルフィーユ「とにかく部屋に来てください。パパッと作れるもの、用意しますから」
そう言ってミルフィーは倉庫の出口に向かって歩き出す。ノアもクリスタルから現れて、タクトに呆れた感情をこぼす。
ノア「……なんなの? あれ」
タクト「ミルフィーは、ああいう子なんだよ。と言うわけで、付き合ってくれないかな?」
ノア「あんであたしが?」
タクト「腹が減ってはなんとやらっていうし…本当に者で釣ろうとは思ってないから大丈夫さ。それに…」
ノア「それに?」
タクト「ミルフィーのごはんは、本当においしいんだ。食べておいて損は無いと思うよ」
ミルフィーユ「ノアさ〜ん、タクトさ〜ん、早く行きましょう〜!」
といういわけで…タクトに半ば連れてこられたノア。

そして、ミルフィーは「(一部)本当にパパッと作れるものなのか?」…というくらいに豪勢なメニューを、
言葉通りパパッと作ってしまった。
(内訳…特製ツナと卵のサンドイッチ、宇宙イカ墨のパスタ、ハヤシオムライス)
勿論、味も文句なしであり、ノアも正直に(静かな声だが)おいしいと告げた。
ミルフィーにどんどん進められる中、ノアはふとつぶやく。
ノア「……なんで?」
ミルフィーユ「はい?」
ノア「こんなことをされてもあたし、何も協力しないわよ」
ミルフィーユ「やだなぁ、そんなつもりじゃないって言ったじゃありませんか」
ノア「……わからないわ。あたしに施しをしても、何の意味も無いじゃない。
 あんた達にとって利益のあることなんてひとつも無いのよ? それなのに、どうして……」
ミルフィーユ「そんなこと無いです。だってノアさん、「おいしい」って言ってくれました」
ノア「……それだけ? たった一言じゃない!」
ミルフィーユ「その一言が、わたしにとって一番うれしいことなんです!
 それに、こうしてノアさんとお話が出来ます。お友達になれます」
ノア「友達ですって? あたしはあんた達なんかと……!」
ミルフィーユ「ご飯をおいしく食べてくれる人に、悪い人なんていません。
 ランファに始めてごちそうしたときも、おいしいって言ってくれました。
 タクト産とエンジェル隊の皆でピクニックに行ったときも…リュウセイ君たちにごちそうしたときも、
 おいしいって言ってくれました。ランファも、タミトも、ヴァニラも、フォルテさんも、ちとせも、タクトさんも…
 そしてギャラクシィ・ユニオンズのみんなも…あたしの料理を食べてくれます。
 みーんな、いい人です。あたしの大切な、お友達です。だから、ノアさんともお友達になれます…大丈夫です!」
ノア「……ひとつ、聞いていい? あんた、紋章機のパイロット?」
ミルフィーユ「はい」
ノア「成る程ね。少しだけ合点がいったわ。これが…想いをエネルギーに変えるってことなのね。
 たった一言の言葉で、クロノストリングエンジンをフルドライブさせるほどのテンションを引き出せる……。
 そして、その言葉をかけてくれる「仲間」を想う気持ちが、更にテンションを引き上げる…。
 黒き月が白き月に負けたわけ、漸く判ったわ」
タクト「いや、それだけじゃないよ」
ノア「え?」
タクト「俺達だけじゃない…トランスバールから四十光年の彼方からやってきた…かけがえの無い仲間も、
 想いを力に変えることが出来る人たちだったからさ。
 リュウセイ君らSRXチームに統夜たち、キョウスケ中尉たちがそうであったようにね」
何気にかっこいいことをいっているが、実はパスタをほおばりつつ言っているから微妙に情けないタクト。
ノア「……そうか、この力があれば、もしかしたら…」
ミルフィーユ「あの…ノアさん、タクトさん?」
ノア「……ちょっとアンタ」
タクト「ん?」
ノア「質問を許可…話をしてあげるわ。何でも聞きなさい」
タクト「ノア…!」
ミルフィーユ「ノアさん…!」
ノア「でもその前に…これで料理はおしまいなの?」
ミルフィーユ「まだデザートがありますよ。最初に焼いておいた、べイクドチーズケーキです!」
ノア「じゃあ、話をするのは、それを食べてからにするわ」
タクト「……そうしますか。舌戦じゃかなわないしな」


そして、食事を終えたノアと共に、タクト達はブリッジへと向かった。
そこには、予め連絡しておき、シヴァ女皇をはじめ、エンジェル隊、ATXチーム、リュウセイ、
統夜達が集まっていた。また、ファルスとレグはアマテラスからの通信で参加している。

まずは、ネフューリアについて。
ノア「あの女は『ヴァル・ファスク』のひとり。あたし達の敵よ」
シヴァ「ヴァル・ファスクとじゃなんだ?」
ノア「どういう意味かはわからないけど、やつらは自分達のことをそう呼んでいるわ。
 かつて、EDENの民は、やつらと戦っていたの…」
ミント「EDENの時代の……敵?」
ちとせ「ということは…ヴァル・ファスクは、EDEN以外の社会に属していた人間なのですか?」
アル=ヴァン「いや、正確には異なる種族だ」
ノア「あんた…知ってるの?」
カルヴィナ「アル…そういれば、前の戦闘で独り言を言ってたわよね…」
アル=ヴァン「ああ…やつらヴァル・ファスクこそが…我らフューリーを滅ぼした元凶だからだ」
ノア「!…あんた、フューリーの生き残りだったの…!」
アル=ヴァン「その通りだ…やつらは、人類に無い特殊な力を持っている。
 何のインターフェイスも必要とせず、自分の身一つで多数の機械を同時制御が出来る」
フォルテ「じゃあ、あの時の巨大兵器の周りにいた艦隊や戦闘機は、あいつが生身で操っていたと言うのか?」
ファルス「そんな連中と、EDENは戦っていたのか…」
ミルフィーユ「それってつまり、オーブンも食器洗い機も掃除機も、同時に扱えるってことですよね?
 お料理しながら掃除できちゃうのかぁ…」
リュウセイ「いや、感心してどーすんだよ……」
ヴァニラ「他に、ヴァル・ファスクに関する情報はないのですか?」
ノア「黒き月のデータベースにも、あまり詳しい情報は無いわ。ただ、これだけはいえる。
 およそ600年のときを越えて、やつらが…かつての外敵が再び姿を現した。これは騒然たる事実よ。
 こんなときの為に、黒き月と白き月があった……はずなんだけどね」
タクト「え? どういうこと?」
ノア「二つの月は、EDENを外敵から守るために造りだされたシステムだからよ」
ミルフィーユ「白き月と黒き月が…EDENを守るために作られた…!?」
ノア「そうよ。そのために、より強力な兵器に進化することも、目的のひとつ」
シヴァ「シャトヤーン様からは、そのような話、一度も…」
ノア「そんな話まで欠落してるんだもんね。折角、あたしが敵の再来を教えてあげたって言うのに」
ちとせ「だから…あなたはあのメッセセージを…」
ノア「そうよ。あの女がヴァル・ファスクだとわかったから……それにしても…。ああ〜もう! 
 思い出すだけでも腹が立つわ! あたしがコアだけになってしまったのをいい事に、
 黒き月を自分の支配下に置いたのよ! 急いでプロテクトをかけて、一部の機能を切り離したから、
 完全に支配されることだけは免れたけど…結局、黒き月を利用してオ・ガウブを作り上げてしまった……」
統夜「ヴァル・ファスク…持った以上に卑怯なことをする…!」
リュウセイ「ああ。外敵と戦うために造られたはずが…その敵の手で悪用されるなんてよ…!」
ノア「そうよ…そんなの、屈辱以外の何者でもないわ!」
タクト「ノア……」
ミルフィーユ「ノアさんの気持ち、わかる気がします。
 あたしも、タクトさんじゃなくて、あの敵のために働かされたら、イヤですから」
タクト「……そうだな。オレもそんなのは真っ平だ。ともかくノア、話してくれてありがとう」
ノア「礼を言われるようなことじゃないわ」
ちとせ「敵は、白き月のテクノロジーを狙っていると言っていました。あの巨大艦もそのために…」
ラミア「もし敵が、白き月すらも手中に収めたとしたら…」
アクセル「それこそ始末に終えんな…俺達には、本来の半分しか持っていない…」
タクト「あ。肝心なこと忘れてた」
ノア「なに?」
タクト「ノア…話を聞いてみる限り、君は黒き月の管理者なのはわかる。でも、前に俺たちが戦った…
 もう一人のノア…あれも君なのか?」
ノア「違うわ。あれは『黒き月』のインター・フェース。私に似せて作った、ただの機械よ。
 私は普段コアの中で眠っていて必要なときにだけ起きるの。
 だから、私が眠っているときに人への応答はインター・フェースに任せているの」
シヴァ「それは、言い逃れのつもりか…?」
ノア「……え?」
ノアの言い方に対し、シヴァは怒気を含んだ声で言う。
シヴァ「半年前、『黒き月』が行った破壊と殺戮…忘れたとは言わせん!
 それともあれは自分の意思ではなくインター・フェースが勝手にやったとでも開き直るつもりか!?」
ノア「なんだ、何かと思えば、そんなこと」
シヴァ「そんなこと…だと!?」
ノア「アレは間違いなく黒き月の意志よ。確かにあたしの意志でもあるけど…元をたどれば、
 設計したEDENの意志ね。あんたが黒き月を非難するのは勝手だけど、それは方法論の違いでしかない。
 EDENを守るために、より強力な兵器に進化すること。それが黒き月の目的だから」
シヴァ「だが、平和であったトランスバールが『黒き月』によって混乱したのは事実だ!!」
ノア「平和? 敵がいることを忘れて、惰眠をむさぼることが?
 戦いがないからと言って、刃を研がないのは愚者のすることよ。白き月だって、そのために造られた事を忘れないでよ」
シヴァ「その兵器のためだけに、多くの人の命が失われても仕方がなかったとでも言うのか!?」
ノア「感情に流されるのは悪いクセね…ッ!」
言葉を続けようとしたノア。だが、突如彼女の胸ぐらをつかんだものがいた。
レスター「きょ、キョウスケッ!」

ノア「な、何のつもり…!」
キョウスケ「その「悪いクセ」を持っているから俺達なんだ…それが理解出来ないのなら…貴様は…!」
エクセレン「キョウスケ! ストップストップ!」
ふと我に返り、直ぐ手を離すキョウスケ。
キョウスケ「く…すまない…」
タクト「シヴァ様も落ち着いてください…」
シヴァ「だが……!」
タクト「ここは耐えてください。俺たちにはどうしてもノアからの情報が必要なんです。
 ここは俺たちにまかせてシヴァ様は休んでください」
シヴァ「マイヤーズ……」
そういうと、シヴァは一旦引き下がり、ブリッジを後にした。
ノア「他に質問はある?」
彼女の問いかけに誰も答えることはできなかった。
ノア「言葉も無いって感じね」
リュウセイ「……"人類に逃げ場無し"」
ノア「?」
リュウセイ「ちょうど2年位前になるな…俺達の故郷、地球でDC戦争が起こったのは」
ノア「それがこの話に関係あるの?」
エクセレン「ある…かな。さっきのは、DC戦争でリュウセイ君が倒したビアン博士がいった台詞よ。
 あの時の地球連邦政府は、外敵から地球を守るどころか…その外敵に降伏しようとしていた」
ミルフィーユ「え!?」
リュウセイ「戦わずにして逃げようとしているやつがいたんだよ…でもよ、それはノアの言っていた愚者と同じだ…
 だから、ビアン博士は、異星人に対抗できる剣を鍛えるために、自ら悪役になって、俺達に倒された。
 そのおかげで、俺達は地球で最も強い剣を振るうもの達…
 アガートラームズとして戦い抜いて…トランスバールの皆とも出逢えた」
キョウスケ「そして今度は、トランスバールの人々が、自ら立ち上がって戦わなければならない…」
ノア「……地球の人たちって、私達が思っている以上に強い人間がいるのね…」
キョウスケ「ノア…さっきはすまなかった。どうしても琴線に触れると、直ぐにかっとなってしまうからな」
ノア「…それはもういいわ」
フォルテ「後は、この事実を受け止めてどう対処するかってことだね…」
タクト「そうだな。まずは白き月についてノアとシャトヤーン様を引き合わせる。それが今出来ることだ」
ちとせ「おっしゃるとおりですわね」
タクト「それじゃ、今回はこれでお開きにしよう」
ノア「それじゃ、あたしは白き月に着くまで適当に休ませてもらうわ」

そういって、ノアはブリッジを後にした。

タクト「しかし、スゴイ話だったな…」
レスター「ヴァル・ファスク…600年前に、EDENと戦っていた敵…そして、フューリーを滅ぼした元凶…か」
暫く話をした後、エンジェル隊は先に退出することになった。
その表情は暗く重い。士気が落ちているのは明白である。
アルモ「無理も無いですよ。圧倒的な強さの敵。オマケにこっちの武器も通用しないっていうんじゃ…」
ココ「しかも、白き月と黒き月が同じ目的で造られていたなんて…」
レスター「なあ、タクト。あの女、信用できるのか?」
タクト「ノアのことか?」
エクセレン「ちょっとクールダラス副指令…まだ根に持ってんの?」
レスター「オレはブロウニング少尉ほどすんなり信じられるものじゃないんでね。
 ヴァル・ファスクも気に食わんが、俺からすれば黒き月だったノアだって…」
アクセル「元々敵対していたからしこりが消えないのは無理も無いんだな、これが」
ラミア「ですが、あの子なら心配は無いと思います」
レスター「ラミア。なぜそう言い切れる」
ラミア「現に私達地球の部隊の中には、敵だった人たちが大勢いますから。私とアクセル隊長もそうです」
タクト「ラミア少尉の言う通りだ。ノアは、皆が思っているほど悪い子じゃないそれは言い切れる…。
 状況は絶望的かもしれないけど、諦めるにはまだ早いさ。
 なんせオレ達以上に絶望的な状況に追い込まれた地球の皆が乗り越えることが出来たんだからさ…」
統夜「マイヤーズ司令…オーブやファルガイアの人たちも忘れてませんか?」
タクト「あ、そうだったね」
レスター「こんなときでも脳天気だな。お前は」
タクト「ま、性分ですから。それから今のノアの話は、白き月に…それとフューリーのほうにも送れるように、
 報告書にまとめておいてくれないか? オレは、ちょっとみんなの様子を見てくるよ」
レスター「わかった。お前のその脳天気を振りまいて来い」
タクト「了解。そうしてくるよ」

第30話「二つの月の真実」

タクトは暫くエルシオールを回ることになる。
エンジェル隊の皆も、リュウセイやキョウスケたちも、いたって普段どおりにしていたが、一抹の不安は隠せていない…。
そんな中、銀河展望公園でミルフィーとあい、二人でカフカフの木で祈った。
タクトはヴァル・ファスクに勝てることを。ミルフィーは皆が無事でいられるようにと……

そして、数日の航行の果てにエルシオールとアマテラスはトランスバール本星へ無事たどり着いた。
その間に、ネフューリアのオ・ガウブはファルガイア星系とトランスバールの中間に位置するザッハ星系を、
手当たり次第に進行している。ザッハ星系に駐在している皇国軍は無論それに太刀打ちできず、
脱出した民間船・護衛艦すらも攻撃の対象になっていた。

誰もが、無力を感じ、悲痛な思いを抱いている。それは、シヴァ女皇も侍女セシリアも…タクトも例外ではなかった。

トランスバール本星にたどり着き、その眼前には白き月が美しく佇んでいる。
そして、一足先に白き月にいたルフト将軍からの通信を経て、エルシオールとアマテラスは、白き月へ入った。

白き月の内部…
そこにはルフトとシャトヤーンのみならず…
何と、ファルスたちのサポートを行っている光珠とフェアリ、ジークとサリーまでも、
そしてフューリーの代表として統夜の幼なじみであるシャナ=ミア姫もいた。

全てが集ったとき、ノアからあるがままの真実が明かされる。

白き月と黒き月は、互いに進化していくのだが、それだけでは最終形には至らないという。
しかし、600年前に起こった時空震(クロノ・クェイク)が、ヴァル・ファスクとの戦いを止めてしまったためである。

二つの月は、対照的な二つの思想に基づいて設計された。

白き月は、人間という不確定要素による進化や突然変異を取り入れ、その変動の触れ幅を利用して最大値を引き出す。

逆に黒き月は、不変性を重視して不確定要素を徹底的に排除し、変動の触れ幅を押さえ、常に安定した出力を目指す。

極端な話……人が関わるか、関わらないか…その違いである。

そして、二つの月は兵器であると同時に、どちらが最適なものであったかを試す、シミュレーション装置も兼ていたのだ。

最終的には、互いに戦った果てに二つの月は一つとなるはずだった。
どちらか一方が勝って、敗れた方のシステムを丸ごと取り込むことによって……。

今まで進化してきた両者のシステムを統合して、より優秀であるという結論が出た思想に基づいて運用すれば、
単体の月だった頃よりも、更に優れたものになる。
それが、二つの月の最終形…外敵からEDENを守るための剣である。

シヴァ「馬鹿な!? 白き月と黒き月は元々ひとつになるために作られたと言うのか!?
 あり得ん!そんな話、信じられるか!!」
ノアの言葉を聞きシヴァは激怒した。
ノア「事実は事実よ。だけどそれもできなくなってしまった…。
 役目を忘れた白き月とその兵器を使って黒き月を破壊してしまった…あんた達のせいでね。
 さすがに、こんな自体は想定範囲外だったわ。はぁ〜……」
キョウスケ「コアだけでも…といっても無駄か」
ノア「ええ。コアだけ融合しても、あいつらに対抗なんか出来ないわ。オ・ガウブに対抗できる手段は…ないわね」
リュウセイ「ちょっと待った。対抗するも何も、「融合」することが前提なのか?」
ノア「は? あのねぇ…二つの月のロジックは全く異なっているのよ?」
リュウセイ「そうとは限らないぜ。エオニア戦役で俺たちが乗っていた機体…覚えているか?」
ノア「……SRXってやつ?」
リュウセイ「ああ。あれだって、概念的には白き月と黒き月のような異なるロジックをうまく組み合わせてるんだぜ?
 それに、SRXを操る俺達SRXチームだって、ぜんぜん違うロジックで生きてる。オレとライ、アヤ、マイ、
 ヴィレッタ隊長…皆考え方が違う。けど、互いに手を取り合って、思いをひとつにすることができる」
タクト「リュウセイ少尉の言うとおりだ。男と女だって、ロジックがぜんぜん違う。
 それでも手を繋ぎ、心を通わせることが出来る。そうだよな、ミルフィー?」
ミルフィーユ「はい! タクトさんと一緒になら、何だってできる気になっちゃいます。
 だから大丈夫ですよ、ノアさん、きっと出来ます!」
ノア「そんな簡単に言ったら苦労しないわよ」
統夜「でも、やらずに諦めるなんてのは一番イヤだからな…」
シャナ=ミア「私もそう思います。シャトヤーン様が申したあの詩にもこうあります『真白は不確か。されど無限』と。
 例え未来は不確かでもそれを変える力は無限にあります」
ノア「やれやれ…これだから白き月の連中は…現実の見えていない夢想主義者ほど、始末の悪いものは無いわね」
シャトヤーン「ですが、人は未来への希望があるからこそ、生きていける……そうではありませんか?」
光珠「シャトヤーン様の言うとおりだよ。それに、『理想』でも『夢』でも…実際にやれば『現実』になるでしょ?」
ノア「…………」
そんな中、レスターから通信が入ってきた。
内容はあのネフューリアが星間ネットを乗っ取り皇国全土に向けて声明を発表しているというものだった。
タクトたちはさっそくその声明を聞くことにした。ネットをつけるとそこにはネフューリアの姿が。

『いいですか。力なき人間の皆さん。何も私は、あなた達を滅ぼそうと言うわけではありません。
 使えるものは使う。人間も、道具を使って生活してるでしょう?
 それは、私達にとっても同じこと。ただ、使うものが機械か、有機体か……その程度の違いでしかありませんわ』

アクセル「こいつは…ろくでもない内容だな…!」

『あなた方のような弱小種族は、選りすぐれた存在に使役されることで、初めて意味を与えられるのです』

カルヴィナ「よく言うわね…!」
カティア「私達を…「使う」といいましたね。と言うことは…」
リュウヤ「俺達に「支配下に入れ」と言ってるようなものか…」
テニア「冗談じゃないよ! 何であんなヤツに!」
シヴァ「静まれ! みなの者。まだ何か言ってるぞ」

『我々への帰属を望まぬ者。異議を申し立てたい者。逆らいたい者は、お好きなように。ただし……。
 あなた方の持つ玩具では、私のオ・ガウブは止められませんので、お忘れなきよう』

ルフト「悔しいが、ヤツのいうとおりだ…皇国軍ではやつらに太刀打ちできん…自分が情けないわ…」
ノア「あーもう! うるさいわね」
シヴァ「なんだと…!?」
ノア「あんた達が自分を責めたって無意味なのよ! あんた達で何とかできたわけじゃないし。
 そんなのが時間の無駄だって、何でわからないの!」
シヴァ「貴様、その言い草は何だ! 目の前で民が殺されているのだぞ!」
ノア「そうよ、殺されているのよ……あたしのせいでね」
メルア「ノアちゃん…」
ノア「黒き月の生産能力と、ネガティブ・クロノ・ウェーブの力を使って、あいつは殺しているの。
 あたしが守るべき……人間たちをね」
リュウセイ「ノア…ルフト将軍…シヴァ女皇陛下…今は過去を悔やむことじゃねぇ…
 大切なのは、これから如何するかってことだ…!」
ルフト「…むぅ。ダテ少尉の言うとおりじゃな」
シャトヤーン「後悔よりも、まず私達には、やらなくてはいけないことがあるはずです。
 そうですよね、マイヤーズ司令」
タクト「はい。どんな状況であれ、俺達は自分に出来ることを全力でやります」
その思いは、エンジェル隊も、地球の人々も一緒だった。そしておそらく、ファルガイアの人たちも…
ノア「あんた達…」
シャトヤーン「ノア…」
ノア「そうよね。それが、月の管理者の使命でもあるのよね! このままやられっぱなしにはさせないわ…
 タクト、リュウセイ! あんた達の案、採用するわ。何としても、やってみせる!」
タクト「…ありがとう、ノア」
シヴァ「私からも頼む。私は、王としてこの星を守る義務がある…そのためなら、憎き敵であろうと頭を下げる…」
ノア「殊勝な心がけね」
タクト「ノア、そんな言い方は…」
シヴァ「かまわん。どう言われようと、私は己が義務を果たすのみだ。それに…今のお前なら、望みを託してもいい。
 そう思ったのだ」
ノア「シヴァ……」
シヴァ「トランスバールを代表する女皇としてお願いする。黒き月の管理者ノアよ。そなたの力を、貸してくれ」
ノア「……EDENと黒き月の名にかけて。確かに承ったわ。トランスバール女皇シヴァ陛下」
シヴァ「……ありがとう」
ノア「べ、別に礼を言われるようなことじゃないわ」

そんな中、ルフト将軍の通信から敵艦隊の知らせが入った。
だが、オ・ガウブはいまだザッハ星系にいたまま。どうやら偵察艦隊らしい。
タクト達は、迎撃の為に出撃する。

☆味方初期
エルシオール(タクト、レスター、ウォルコット、アルモ、ココ)、アマテラス(シノン、ミユリ、シメイ)
エンジェル隊1[ラッキースター(ミルフィーユ)、ハッピートリガー(フォルテ)]
エンジェル隊2[カンフーファイター(ランファ)、ハーベスター(ヴァニラ、ノーマッド)]
エンジェル隊3[トリックマスター(ミント)、シャープシューター(ちとせ)]
統夜&光珠[グランティード・ドラコデウス(統夜、テニア)、ソウルランサー(光珠、フェアリ)]
カルヴィナ&アル[ベルゼルート・ブリガンティ(カルヴィナ、カティア)、ラフトクランズ(アル=ヴァン)]
シャドウミラー[クストウェル・ブラキウム(アクセル、メルア)、アンジュルグ(ラミア)]
ATX[アルトアイゼン・リーゼ(キョウスケ)、リヒト・ヴァイスリッター(エクセレン)]
リュウセイ&如月兄妹[ART−1(リュウセイ)、エスメラルダ・マキシ(ヤヨイ、リュウヤ)]
特装型戦闘機[アメノハバキリ(ファルス)、アマノムラクモ(レグ)]
ジーク&サリー[クラウドハーケン(ジーク)、クロイツ・ヴァールハイト(サリー)]

★敵戦力
レグス・ジオ戦艦、ラムス・ジオ突撃艦、リグ・ゼオ戦闘機
リュンピー、ドナ・リュンピー、ガンジャール、ヴォルレント

現れた機体は、おそらく以前からデータを持っていたであろうフューリーの機体を除けば、
全く見たことの無い機体が占めている。おそらく、これが本来のヴァル・ファスクの戦力であろう。

だが、新たに加わった光珠たちと共に、何とか撃退することに成功した。

その頃、オ・ガウブ。
静かに佇んでいるネフューリアが戦況を把握していた。
「先発隊は全滅、か…そうね。そうでなくては面白くないわ」
その時謎の声が響く。
『ネフューリアよ……』
「……!」
『どうした、何を驚く…それとも、心にやましいことでもあるのか?』
「いえ、そのような事は決して。ただ、あなた様が直接お話になることなど、ここ100年程ありませんでしたので」
『たかが100年であろう。まあよい…時は十分すぎるほどにある。焦ることは無い。
 敵に密かに入り込み、侵食し、我らの到着を待つ……それがお前の役目。そうだな、ネフューリア?』
「はっ、重々承知しております」
『ならばよい。忘れていなければ…な』
そして、謎の声は聞こえなくなる。
「ふっ……今のうちにせいぜいふんぞり返っているといいわ。
黒き月の力を取り込んだ、このオ・ガウブに、さらに白き月の力をも取り込めば…!」
しかし、そんな彼女も絶句するようなことが起こるとは、このとき…予想すらもしていなかった。


白き月。そこには、再び一同が集っている。
どうやらノアが、オ・ガウブの対抗策を見出すことが出来たそうである。
理屈でいえば、オ・ガウブにあるネガティブ・クロノフィールドを打ち破ればいいわけである。
その直後、タクト達はネガティブ・クロノ・ウェーブの説明を受けることになる。
ちなみにノアの説明で理解できたのは、ちとせとキョウスケ、エクセレン、シャドウミラー組
(意外だが)リュウセイだけだった。

ネガティブ・クロノ・ウェーブの原理とは、ノア曰く…
「特殊波長の時空波の放出によって局所的な時空のねじれに似た現象を引き起こし、エネルギーを転移させる」とのこと。
これを受けるとレーザーだろうがクロノストリングエネルギーだろうがトロニウムエンジンのエネルギーだろうが…
すべて強制的にクロノ・スペースに転移させられてしまう。
つまり、こちら側の次元では、それらのエネルギーは消えてしまい、機体が全く動かなくなるわけである。

そのネガティブ・クロノ・ウェーブで、艦を囲む一種のフィールドを形成している。
それが、オ・ガウブのネガティブ・クロノ・フィールドの正体である。
これを打ち破るには、「逆位相の時空波の衝突による無効化」が必要…なのだが、
これも(ちとせを除く)エンジェル隊には意味がわからず、先ほどのメンバーしか理解できなかった。

アクセル「要するに、ネガティブ・クロノ・ウェーブとは正反対の構成をしている波をぶつけて相殺する…だろ?」
ノア「理論上ではそういうことよ。でも、あの艦の出力は半端じゃない。
 それと対抗しうるだけのエネルギーを、こちらも用意する必要があるわ」
タクト「でも、突破口が見えただけでも大進歩だな」
ノア「お気楽ねぇ、あんたは」
シヴァ「それが、マイヤーズのよいところだからな」
シャトヤーン「希望を捨てないことこそが、一番大事です」
ノア「ふぅ…ここには、お気楽バカしかいないのかしら?」
タクト「君も、その中の一人なわけだけどね」
ノア「あ……そう、かもね。あたしも相当、頭がバグってるわね。こんな連中に手を貸すなんて」
タクト「こんな連中で悪いけど、よろしく頼むよ」

そして、シヴァの提案により、白き月を皇国軍の司令部として移動することを決めた。
さらに光珠から、とんでもない提案が持ち込まれた。
何と、白き月をファルガイア星系に転移させると言う提案である。

白き月を一時的とはいえ、トランスバールから離れることにより、
トランスバール本星の被害が抑えられることが出来ると踏んだためである。
(ネフューリアが狙っているのはあくまで白き月。トランスバール本星を狙うのは二の次のはず)
ちなみに、ソウルランサーに積み込まれているC.U.B.E.の力と、
白き月のクロノストリングエネルギーを使えば、クロノドライブとは比較にならないほど…
ぶっちゃけ「直ぐ」にファルガイア星系にたどり着くことが出来る。
ちなみに、C.U.B.E.によるワープドライブのノウハウは既に確立されているため、もしもの心配も無い。

結果、シヴァもシャトヤーンもルフトも、この案を採用。皇国軍で選りすぐりの艦隊と技術者を白き月へと集めた。
そして、タクトがファルガイア星系にいるギャラクシィ・ユニオンズへ通信を入れる。
通信による話し合いの結果、ファルガイア星系の木星へ転移することを決めた。
話によると、木星にゾンダーの上位の存在である原種が集結していると言う。
ギャラクシィ・ユニオンズは、原種との決着をつけるために向かっているとのこと。

エルシオールとアマテラスは、転移後、直ぐに先頭に入れるよう準備を行うことになった。
そして、白き月はまばゆい光を帯びて、転移する。

ちなみに、ネフューリアは白き月が突如消えたことに驚愕したのは言うまでもない。
…もっとも、冷静に対処してはいるが。
(以下次回)

オマケ。
統夜「あのさ、秋水…」
光珠「なに?」
統夜「なんか、名前の字が違ってないか?」
光珠「ああ、名前? トランスバールでファルスさん達の手伝いをするときに、新しい決意をこめて、文字だけ変えたの。
 『秋水』なんて、なんか男っぽい名前な気がするし」
統夜(ある意味男の名前だな…)


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