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超・短遍「何かと微妙な学徒達の一日」

聖戦都市カーディナル。

 

架け橋(ブリッジ)と呼ばれる戦場を舞台に古代文明の遺産をめぐって人類と魔族が争い続けて約百年経過している世界に存在する都市。

魔族と戦う若い力を育てる最大級の学府がある都市。

ある者は富を求め、ある者は力を求め、ある者は名声を求めて。

誰もが己の青春を燃焼し尽せる何かを求め、ブリッジの中での戦いに身を投じていく。

これは、そんな世界の中で存在したある一人の学徒を中心とした何かと微妙な一日の話である。

『ピピピ…ピピピ…』

寄宿舎の一室で、目覚ましが鳴る。

「……朝か」

目覚ましの横で寝ていた一人の男が身を起こそうとしたとき、突然目覚ましの声が収まった。

「…電池切れか?」

そう思って男は目覚ましを手に取ったら、さっきとは別の音声が響いた。

『起床しろエクス。さもなくば射殺する』

「ぬおぅ!」

男…エクスは思わず目覚ましを殴り飛ばした。

学徒とはいえ彼も戦いを学ぶ者。目覚ましは見事にグーの形にへこんでいた。

「いつこんなのを吹き込んだんだ。あの戦場ボケ…」

エクスは着替えて部屋を出ようとしたが、今度は上からコントの如くたらいが降って来た。脳天直撃で暫くうずくまっていたが、その時隣の部屋から声が聞こえた。

「やったぁ! うまくいったよ兵長どの!」

「うむ、良くやった。君には工作員としての才能があるな」

エクスはすぐに隣の部屋に突っ込み、そこにいた一人の男と女フェアリーに向かって叫んだ。

「スニーフ! エルフィア! お前らかぁ!」

 

「へへ〜んだ! 油断したエクスが悪いんだからね!」

「どじゃっかしい! 今回に限って変な二重トラップ仕掛けんなッ! ついでに言うならまたこんな遊びのような仕掛け設置を真剣に手伝うなこの戦場ボケェ!」

 一室から聞こえる漫才のような会話は、少し離れた所にある食堂「イコワダテ」にいるハガネ、フォウリィ、七海の三人の耳に聞こえていた。

「…相変わらず朝から元気なモノだな」

「ちょっと、楽しそうね」

「全く何やってんだが…」

『ズバババーン!』

 

「あ、あれ? 今、聞こえちゃならない魂の叫びみたいな音が聞こえたような……」

「フォウリィ…あれはスタン・グレネードの爆発音だぞ」

 

「……俺の弟子を傷付けようとする奴は、誰であろうと、どんな理由があろうと容赦しない。覚えておくんだな、エクス」

「待ちなさぁぁぁぁぁい!」

七海はすぐさま何処からか取り出したハリセン片手にエクス達のいる部屋に向かって走り出した。

 

とりあえず、朝の寄宿舎で起こった騒ぎは、スニーフが責任を取って部屋の修理と仕掛けの撤去、エクスの治療を行ったことでひとまず収まった。当然彼は七海から怒涛のハリセンスマッシュを喰らったのは言うまでも無く。

その後、6人は図書館へ向かい、入り口前にある掲示板に目を向けた。この掲示板に張られている任務をこなすことで、学徒たちは強くなるのである。

「『ライネスブリッジ前線基地への装備品輸送』に『キメラ・スレイブの戦闘テストの手伝い』、『魔族との決闘』の三つか…今回はどれにするか」

「エクス、俺は装備品補給を推奨するが」

「いや、他のチームも結構参加してる。俺らが増えた所でちょっとな」

「でも、魔族との決闘もなんだかきつそうだし」

「…消去法で戦闘テストの手伝いだな」

「そうだな」

そして図書館にて任務承諾の手続きを終えた後、6人は練武用に使われるブリッジ『プラクティスブリッジ』の試験場予定位置に向かった。

 

「…それじゃ、テストを始めるとしますか」

キメラ・スレイブの製作者、マシューから指示を受け、各々の武器を手に取る6人。

相手のキメラ・スレイブは6体。

「まずは手始めに…!」

まずエクスが、有無を言わせずに素手で近くにいたキメラの顎を打ち、怯んだ所を片手でつかみ思い切り放り投げた。

「ハガネ!」

「任せろ!」

上にほうり投げられたキメラはハガネの手にある大剣で真っ二つに断ち切られた。

『グアァァァァ!』

その隙を逃すまいと別のキメラが襲ってきたが、その攻撃は七海の魔術・ヴィントバイトとエルフィア超術・フォースヴェールで全て阻まれ、さらにそのキメラの脳天をスニーフが放った銃弾が穿った。

「隙だらけだな…」

流れるように2体のキメラを倒したエクスたち。

「さすがに第1形態じゃ話にならんな、ここからは新武器の使用可能にするぞ」

マシューの一言が6人に緊張を走らせる。

その時、キメラの背中から何かが飛び出した。

「危ない! 神秘なる加護よ!」

聖術・護りの盾を生成し、飛び出した何かを防ごうとするフォウリィ。

衝突した瞬間、爆発が起きた。

「な…まさか生体ミサイルか! 実用化に成功するとは、流石最大級の学府だな」

「感心して場合じゃないでしょ…」

スニーフの冷静な解説にすかさず突っ込む七海。

キメラは一箇所に纏まり、そして二手に分かれた。生体ミサイルによる遠距離と、突進による近距離に分かれたようだ。

「獣にしては知恵を働かすな」

「だったら、こっちも連続攻撃で蹴散らすのみだ! 皆、頼むぞ」

「了解!」

 後列のキメラが生体ミサイルを発射した時、エクスは腰に携えていた刀を抜き、ハガネと共に前に出た。そして、二人は同時に武器を振りぬき、互いの剣圧による巨大な衝撃波が生体ミサイルを全て一刀両断にする。

 その隙にフォウリィは聖術・福音の槍を敵陣に向けて放つ。

 前衛のキメラはその槍をかわすが、キメラの眼前にはエルフィアが発動させた超術・サイコスフィアが待ち構えていた。念の爆発により動きを止められる。

 この時、全てのキメラはほぼ一直線に並んでいた。

その隙を逃すまいと、七海とスニーフが連携攻撃の締めとして、得意の魔術・アクストブリッツと魔力コート付の対物ライフルの同時攻撃で一気に残りのキメラを殲滅した。

 

 新兵器を搭載したキメラ・スレイブ6体をいとも簡単に倒されてしまい、マシューは気を落とすと思いきや、むしろ逆に改善点があると6人に御礼を言って、任務終了の許可を出した。

「マシューのヤツ、相変わらずなポジティヴ思考だな…」

「だが、失敗してもくじけない所は賞賛に値するな。生体ミサイルの開発を成功させるのには驚きだ」

「いや、なんでそこだけ強調してるのよ」

「まあ、とりあえず終わったことだし、早く寄宿舎に戻ろっ。ボクもお腹すいてきたし」

「そうね。そういえばハガネさん、今日は誰が夕食担当なの?」

「今日は…自分と七海だな」

「あ〜…ハガネ、無理して変なの作るなよ」

「分かった。努力はする」

 

 が、結局ハガネは「今日こそは」とつい本気でやってしまい、夕食はフォウリィを除いて全員あまり食が進まなかったらしい。

 様々な任務をこなしてきた彼らだが、今日は何かと微妙な1日となった。

 その後、彼らとんでもない事が訪れるのだが、それはまた別のお話である。

超・短遍、終了


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