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玖・黒い軍勢と女王

無数の卵を抱えた女王がその巨体を横たえている。
それにかしずくように、巨大蟻の軍勢が取り巻いている。

この数の卵が孵り、地上に溢れたら街はたちまち黒い絨毯に覆われてしまうだろう。
扉の奥にあった光景。それはまさに黒い軍勢と女王の王国の姿だった。
女王は一目でわかる。人間の上半身が巨大な蟻の下半身にくっついてる。

「べた過ぎて気持ちわる…」

そうつぶやくエルフィアをよそに、エクスが刀をすらりと引き抜く。もはや本気モードである。

「お前が、女王蟻かッ!」

「私たちが来たからには、あなたたちの企みもこれまでです!」

「これでチェックメイトだ」

「…覚悟しろ」

それぞれが啖呵を切る中、女王蟻は静かにつぶやく

「冒険者がここまで来たか……ふん、あの道化も所詮その程度の実力だったのじゃな」

「何度でも言え…お前は俺が叩き斬る…守るもの為に!」

「ほう…そう言っておられるのは今のうちじゃぞ?」

そう言って女王蟻は、腹部にあるものを示した。そこには…

「! 七海ちゃん!」

「貴様…盾代わりか!」

「…これではうかつに攻められん。如何する」

「くっ…」

如何するか攻めあぐねているエクスたち。気がつけば、周囲には無数の巨大蟻の軍勢に囲まれていた。

「あら…どうしましょう…」

「…誰かが確かめるのを兼ねて、やつに近づくしかない」

「分かった。だが、だれが行く?」

「俺が行こう。あいつの異変に気づかなかった責任があるからな」

「分かりました。スニーフさん、七海さんをお願いします!」

「了解だ!」

「よし、スニーフの進む道を開く! エルフィアはスニーフについていてくれ!」

「うん!」

エクスたちはすぐさま行動を開始した。

エクスの刀が、ハガネの大剣が、フォウリィの聖術が並み居る巨大蟻を蹴散らす。そしてスニーフはエルフィアと共に切り開いた血路を突っ切る。

そして眼前に捉え初めたその時、女王蟻がその前足をブリッジにつき立て、粉塵を巻き起こす。

唐突な粉塵攻撃に、スニーフは思わず目を瞑ってしまう。そして目を開けたその時、女王蟻の足がスニーフの体を貫かんとしていた。

「しまっ…!」

「やらせるものかぁ!」

スニーフの前に飛び出したエルフィアが、そのままスニーフをかばって鋭い足に貫かれると誰もが思った。

しかし、エクスは確信を持っていた。彼女なら大丈夫だと。

その証拠として、現にエルフィアの眼前に、見えない障壁が女王蟻の足を塞いでいた。

それは七海が使う魔術でも、フォウリィの唱える聖術でもない第三の術…

「超術(テレキネシスフォース)かッ!」

「その通り! ボクはこれでも超術遣いの端くれなんだもん。唯のマスコット代わりじゃないんだから!」

「そんなことは一言も言ってないが、そうは思っていたことには誤ろう。それと同時に感謝する!」

そう言ってスニーフは、残りの脚の猛攻をかいくぐり、腹部を捕らえる。

そして盾代わりとなっているものの正体を看破した。

「これは疑似餌かッ! ならば問題ない!」

スニーフは隠し持っていた近接用拡散銃(所謂ショットガン)を構え、七海の姿を模した疑似餌もろとも撃ち砕いた!

「なんだと! わらわの疑似餌が見破れらたと言うのか!」

 「…そうか。よく考えたら七海は次の女王の依代。
  蟻達にとっても殺されては困るから盾にするはずも無い

「をい。そんなんだったらわざわざこんな手の込んだことする必要なかったんじゃ…」

「とにかく、これで憂いはなくなりましたね!」

そう言ってエクスたちも、女王蟻への攻撃に参戦する。

 そして、激闘の末に女王蟻の体も限界に達していた。

「おのれ…!」

「覚悟しろ女王蟻…これで、キリだぜッ!」

そう言ってエクスは、残った魔力を刃に練り込み、とどめの片手突きを女王蟻の腹部に打ち込んだ。

その一撃で女王は身をくねらせ…

「馬鹿な!地上を飲み込むはずのわらわの軍勢が……! キシャァァァァァァァ」

最後の断末魔をあげて果てた。

「…女王蟻を倒せたな。後は七海だけだ」

「そうだ! 七海ちゃん?」

エクスたちは辺りを見回す。周囲は女王を失ったため統率が取れなくなり、あたりを右往左往している。

そんな中に、大きな卵を愛おしそうに抱えている七海の姿が。

「七海!」

スニーフがあわてて駆けつけ、そして七海が持っていた卵を引っぺがし、放り投げた。

それが合図となったのか、七海はしだいに正気を取り戻す。

「ん…あれ?」

「七海、大丈夫かッ!」

「スニーフ…あたし、なんかした?」

「キミは女王蟻に操られてたんだ…だが、無事でよかった…」

「…スニーフ、脱出しないか?」

「む…そうだったな」

漸く六人が揃ったエクスたち。すでに右往左往しているとはいえ、この大群の蟻をどうにかしなければならない。だが、スニーフは不適にも笑った。

「ここは俺に任せろ」

そういってこれまたどこから出たのか、大型の火器「ロケットランチャー」を構えて、出口らしき場所に固まっている巨大蟻に向けてぶっ放した。

耳に劈く爆音と共に蟻達もあっさりと消滅。エクスたちは出口めがけて一気に駆け抜けた……。


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