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「戦場ニ青キ春ノ歌ハ響クカ?」

壱・それぞれの朝

 

『ピピピ…ピピピ…』

寄宿舎の一室で、目覚ましが鳴る。

「……朝か」

目覚ましの横で寝ていた一人の男が身を起こそうとしたとき、突然目覚ましの声が収まった。

「…電池切れか?」

そう思って男は目覚ましを手に取ったら、さっきとは別の音声が響いた。

『起床しろエクス。さもなくば射殺する』

「ぬおぅ!」

男…エクスは思わず目覚ましを殴り飛ばした。

学徒とはいえ彼も戦いを学ぶ者。目覚ましには、新たにグーの形をしたへこみが二つに増えた。

「…すっかり忘れてた。アラーム設定を戻すのを」

そうつぶやき、改めて身体を起こしたエクス。

「前にエルが仕掛けた起床トラップ…スニーフが普通に手伝ったんだよな…そのおかげでこんなアラームは鳴るわタライが落ちてくるわ、挙句に注意しに行こうとした矢先に手榴弾投げられるわ…」

なにやら最後の被害が尋常じゃなさそうな気もするが、以前の寝起きは凄い目にあったらしい。

「ん…どーしたのエクス?」

突然、あどけなさを感じる女の子の声を聞いたエクスは、自分がいるベッドから、声を聞いた方向…デスクの脇にある小さなベッドへと視線を向ける。

そこにいたのは、人よりも小さな身体に美しい羽根を背中から生やした少女。

このカーディナル学府に入る前から共に旅をしてきた妖精のエルフィアだった。エクスが言ったエルとは、彼女の愛称である。

「お、起きたか。エルとあの戦場ボケが仕掛けたトラップだよ」

「今日は何にも仕掛けてないよ?」

彼女の質問に対してエクスは呆れ気味に答えた。

「分かってる。前に仕掛けてたアラーム設定を元に戻すのを忘れてな」

「ああ、それでスニーフの台詞が出てまた殴り飛ばしたってコト?」

「そういうこと」

そう言ってエクスは、ベッドから降りてクローゼットから服を取り出す。

「エルも早く着替えろよ。朝飯食いっぱぐれるぞ」

「うん、わかった!」

そう言って、エクスは早々と着替えて部屋を出る。そしてエルも、ミニチュアサイズなクローゼットから出した制服に着替え、部屋を後にした。

尤も、妖精ゆえに戸締りに時間がかかってしまったのだが。

 

その頃、学生寮の隣にある練武場では大人びた顔つきをし、頭部に人間のものとは異なる耳をもつ男が、大きな木剣を振るっていた。

大きさゆえにかなりの重量であろうその木剣を、最低限の動きで的確に振るうその動きは、まさに風の様。

そんな中、練武場にもう一人男が現われる。

「精が出ているな、ハガネ」

後から来た男は、そう剣を振るう男に話しかけた。

ハガネと呼ばれた男は、木剣を振るうのを止め、練武場の入り口に目を向ける。

「…スニーフか」

ワンテンポ遅れて話したハガネは、後から来た同僚スニーフに答えた。

「そろそろ朝食の時間になる。切り上げた方が良い」

「…分かった」

そう言って、ハガネは木剣を練武場の備品入れに戻した。

その時、何かの音がした。それにいち早く反応したのはスニーフ。

「! 敵かッ!」

そう言って、スニーフはどこからもなく取り出した手榴弾をいきなり音のした方向に投げつけた。

「…まて、今は唯の…」

鳥達が飛ぶ音…といいかけたハガネのツッコミよりも早く、練武場の脇にある林の一部が手榴弾によって蹂躙された。

 

そして、学生寮内・食堂。

 

手榴弾の爆音は、当然の如くこの食堂にまで響いていた。

寮内のほとんどの生徒が手榴弾の音に「またか…」と呆れる中、落胆する少女が一人。

「あのバカ…また勘違いして何かぶっ飛ばしたわね…!」

黒髪の少女は額に青筋を浮かべながらつぶやく。そして彼女の隣には、彼女をなだめようとする耳の長いエルフの女性がいた。

「まあまあ七海さん。スニーフさんのこの行動は今に始まったことではないみたいですし…」

「何言ってんのフォウリィ! 確かに戦いのセンスは私たちより上だけど、それ以前に一般常識って物が欠けてんのよアイツはッ!」

あ〜もう、と言う感じで頭を抱える七海。

「またあいつの説教しなくちゃならないじゃない…」

「あ、あははは…」

 うなだれる七海を、フォウリィはただ苦笑いするしかなかった。

 

 そして少しの時間が経過した後、二階への階段からエクスとエルが、外への入り口からハガネとスニーフが七海たちの元にやってきた。

 こうして、エクスたち六人はいつものように集まるのである。

 

 弐・強襲

 

 エクスたち六人は一通り朝食を終えた後、いつもの様に学府の本校舎へと向かおうとしていた。

 その時、学府全域に喧しいほどのサイレンが響く。そのサイレンの音に、七海は驚いた。

「な、何? 緊急警報?」

突然の事態に困惑仕掛けるが、それを制したのはスニーフだった。

「待て。ここは大人しくして情報を待つんだ」

そういって混乱しかけた状況を抑える。

その後、警報の中で放送の声が続いた。

『緊急警報発令。緊急警報発令。カーディナル聖戦学府内に侵入者を確認。学徒達は直ちに警戒態勢へ以降し、侵入者に備えよ』

「し、侵入者!」

 放送の内容に驚いたのはエル。学府に何者かが侵入してくることは滅多に無いからである。しかし、エクスがすぐさま落ち着かせるように話しかけた。

「落ち着けって。まずは俺たちが何時でも戦えるようにしておかないと」

「う、うん…テレポーションで刀をこっちに!」

エクスの言葉に落ち着きを取り戻したエルは、少しエクスたちから距離を離し、宙に浮かんだまま目を閉じた。

 その瞬間、エルが妖精であることの証でもある蝶のように美しい羽が光り始める。その羽から発せられた光は羽から離れた後、エルの眼前にある一箇所に集中した。そしてその光は次第に膨らみ、細長くなってゆく。

 そしてエルが目を開き両手をかざすと、その光は確かな物質となり、鞘に収まった一振りの刀へと変化していった。そしてその刀に纏っていた光が収まると、刀は万有引力の法則にしたがって落ちてゆく。

 エクスはその刀を左手でキャッチし、確かめる。

「よし、刀に問題は無いな…!」

エクスは確認を終えた後、刀を腰に取り付けた。

「相変わらず便利なものだな。エルの超術(テレキネシスフォース)は」

 そう感心するのはスニーフ。しかし、エルは少し照れながらもこう切り返す。

「えへへ…でも、七海ちゃんの魔術(ウィザードクレスト)やフォウリィちゃんの聖術(クラリックスペル)と違って、使い手の素質に左右されるのが難だけどね」

「…そんなことを言ってる場合ではない。敵が来る」

 ハガネからの忠告通り、どこからもなくエクス達と同じ数で構成したもの達が現れる。長い間、人類と敵対している種族…魔族の尖兵たちだった。

「二刀流の骸骨剣士…スパルトイが四体か。なら俺達だけで問題ない」

「スニーフに同感だ。行くぞッ!」

エクスの同意の声と共に、それぞれが役目を自覚して敵にアタックする。

エクスたちの中で最もすばやく身動きできるのはスニーフ。先陣を切って普段から持っているハンドガン二挺を構え、弾丸を放つ。

その弾丸は、確実にスパルトイの頭部と制御装置でもある首飾りに命中する…はずだった。

「な、何!」

 スパルトイは、両手に持つ二振りの剣で、前もってガードしていたのだ。まるで、その攻撃は予測していたかのように。

 スニーフは、反撃の太刀筋を避けながら思案する。

(まぐれか…それともこっちの攻撃を読んだのか?)

「ならば、確かめるまでだ!」

 まるで、スニーフの考えていることが分かったかのように、エクスが間に割り込んできた。

 エクスは、スパルトイの攻撃を左手に鞘ごと持った刀で受け流し、その隙に体を左に回して鞘の先端で頭を砕こうとした。

 しかし、スパルトイは寸前のところでかわし、辛うじてその鞘に当たらずにすんだ。それでもエクスは手馴れたように右手で柄を握り、先ほどとは逆に回りつつ、抜き打ちを放った。この一閃にスパルトイの魂ともいえる首飾りが真っ二つになり、スパルトイはただの骸骨となってその場に崩れ落ちる。

「くっ…最初の鞘突きをかわすなんてな…!」

 一体のスパルトイを漸く倒せたエクスは舌打ちをしつつ戻る。

「どうやら、敵はこっちの攻撃を…いや、行動を読むことが出来ているのかもな」

「…どういうことだ?」

「そのままの意味だ。侵入者の中に、心を読むような力を持つ実力者がいるのかも知れん」

 スニーフの推測にフォウリィが裏づけするかのように続いた。

「私も聞いたことがあります。魔族には、相手の心の声を現実の空間に具現化するものがいるとか…」

「そ、そんなのがいるの!」

 驚愕するエル。

「だったら、こいつらに心の声を聞かせる間もなくぶっ飛ばせばいいんでしょ!」

 そう強気に言い出したのは七海。彼女は、同じ紋章が描かれたカードを複数取り出し、残りのスパルトイの周囲にめがけて投げつけた。

 そしてその魔術の名前を発すると共に、そのカードから魔力が爆ぜる。

「吹き荒れなさい! 吹雪の紋章(シュネーゲシュテーバー)!」

 カードから爆ぜた魔力は、温度を下げて名前どおりに吹雪となる。その局地的な極寒と暴風がスパルトイたちの動きを制限する。

 そして猛烈な吹雪は、スパルトイたちをそのまま巻き上げ、霧散した。

 巻き上げられたスパルトイは、ほぼ一箇所にまとまっており、引力にしたがって落ちている。

 その刹那、フォウリィは静かに言葉をつむぐ。

「彼の者に力の福音を…!」

その言葉と共に、翳した手から光が放つ。その光は帯となって、ハガネの大剣に纏った。

 それを確認したハガネは、獣人ならではの身体能力(義体の機能も入っているが)を活かして跳躍。

その勢いを利用して、空中で力を纏った大剣を振り上げた。

 振り上げた刃は、残りのスパルトイを文字通り真っ二つにしたのだった。

 いきなり強襲してきたスパルトイたちを撃退し、安堵するエクスたち。だが、危機が去ったわけではない。

 それを証明するかのように、学府の本校舎のほうから煙が発生する。

「まさか…頭を叩く作戦か!」

そう判断したスニーフ。

「だったら、すぐに行かないと!」

「待て、エクス。相手はこちらの心を読むことが出来る のだ。うかつに突っ込んでどうする」

「なんで、そんなに言い切ったことを…」

「さっきの戦い、お前は俺の考えたいたことを知っていた」

「? どういうことだ?」

「俺は最初に仕掛けたとき、こっちの攻撃を呼んでいるのかと考えていた。決して口に出していたわけではない。だがエクス、お前は俺の考えが聞こえていた」

「あ…そういえば…!」

「つまり、俺達の心の声が筒抜けになりつつあるということだ」

しばらく考える一同。

「…だが、それでも行くしかあるまい」

「ハガネさんの言うとおりです。いまさら考えても仕方がありません」

「しかし、やつの力に対してはどうするつもりだ」

 フハガネとフォウリィの提案に疑問がぬぐえないスニーフに対し七海がこう答えた。

「決まってるでしょ。その時はその時で、対策を考えればいいわ」

「七海ちゃんの言うとおりだよ!」

エルも七海に同意している。

「スニーフ、俺達がこの学府に来る前に出会ったときも、力を合わせて何とかできた。だから今回も何とかなるって!」

「……そうだな。仲間を信じないでどうしろと…行こう」

スニーフも漸く折れて、エクスたちは本校舎へ急ぐことになった。

 

  参・心境

 

 本校舎へと急いで向かっているエクスたち。

そんな中、エルはこんなことを考えていた。

(心の声が聞こえるかぁ…ボクは超術である程度の声を聞かせることが出来るけど、本音まで聞こえちゃうのは何か嫌だな〜)

「…エル、聞こえている」

「え! ハガネ、ボクの考えてることが聞こえた?」

「…ああ」

 考えていることが聞こえてたことにへこむエル。それに対して冷静に判断するスニーフ。

(おそらく、敵の力は現在進行形で発揮されつつあるようだな)

「スニーフ、さっきのも考えてただけか?」

「その通りだエクス。どうやら周囲の心の声が聞こえるようになってくるな」

「本音が聞こえるなんて、セコイ事をするわね…」

「皆さん、魔族の波動を感じます。もうすぐです!」

フォウリィが示した部屋にすぐさま突撃するエクス達。

 そこには、既に何人かが戦闘不能に陥っている学徒や教師がおり、彼らが睨んでいる先には、一体の巨人とも言うべき存在が半分ふんぞり返っている。

「元凶は貴様か!」

 スニーフはいつでも撃てるように二挺拳銃を構える。

ふんぞり返っていた巨人はスニーフの問いかけに堂々と答えた。

『その通りだ! 俺様は魔族の強襲部隊長、ヒューベリオン!』

(えらくノリのいい魔族だな…)

『おい、そこの刀使い! 確かに俺様の性格はそれなのは認めるが、最初の反応がそれか!』

「あ、やっぱり聞こえてた?」

『勿の論よ! 俺様の力は心の声を実空間に具現発生させること! 故にお前たちの考えは筒抜け丸裸!』

 ビシッとエクスたちに向けて指をさしながら魔族ヒューベリオンは答えた。

「あんたの能力は分かった。それかもう一つ質問したいのだが…」

『何で俺様たちがこの学府とやらを襲ったかって?』

「そう、それそれ」

エクスとヒューベリオンのやり取りは続く。

『聞きたいなら教えておこう…それはもちろん、ここを新たな拠点とするためよ! ここはお前たち人類が新たな戦力を生み出すための場所だと知っている。故に、ここを叩けばお前たちの戦力生産力が減らせる上に、新たな拠点が出来上がるって寸法だ。そして、ここは人類の戦いにおいて情報が収束し易い場所でもある。情報力の確保もできて一石二鳥にもなる訳よ』

「あ〜…長ったらしい説明台詞でどうも」

その後、ハガネが思わずつぶやく。

「…まさか堂々と教えるとはな」

『そりゃあ俺様の力はぶっちゃけ心の声を駄々漏れにさせることだ。それは俺様としてもある程度例外ではない。どうせ聞こえるだろうからわざわざ言ったまでよ。それに…』

「それに…?」

エクス達六人は同時に尋ねる。

『お前たちを倒せば同じことだしな!』

そういって、ヒューベリオンは戦闘体勢をとる。

 

 四・青き春の歌

 

魔族強襲部隊長ヒューベリオンに挑むエクス達。心の声が周囲で雑音のように響く中で果敢に挑むものの、エクスたちの心の声を聞くヒューベリオンはそこから攻撃を予測し、確実に回避を行い、あまつさえ反撃を繰り出す。時には偶然の一撃がヒットすることがあるが、それは致命傷にならず、長期戦へと持ち込まれる。

そして、少しずつ追い込まれていってゆくエクス達。

「ちっきしょー…心の声が聞こえるなんて反則気味だぜ…」

「同時攻撃をしようにも、それすらも読まれるから仕掛けられん…」

 エクスとスニーフがつぶやく。

「…せめて、やつの力が発動しない隙が生まれれば」

『どんなことを考えようが無駄なことだ! 俺様にはお前達の心の声が聞こえるんだからな!』

「心の声…本音…」

 エルが少し黙りこくってしまう。

「エル、どうしたの?」

七海が心配するが、それは杞憂に終わった。なぜなら、エルは顔を上げ、開き直ったようにこんなことをいったからである。

「どーせ聞こえるなら聞かせてやる〜!」

『な、何だぁ! いきなり素っ頓狂なことを…ってちょっと待てぇ!』

ヒューベリオンは、エルがこれからやろうとしていることを読み取って仰天した。古臭い言い方だがこれしか表現のしようがないぐらいに。

「好きだよエクス! 大好きだ〜!」

その台詞にエクスも仰天し、周囲も耳を疑った。しかし、エルの開き直りは続く。

「始めて出会った時はちょっと嫌な出会い方だったけど…ずっと旅をして、この学府に入って…ずっと一緒にいるうちに好きになったの! ううん、好きなんてレベルじゃない! ボクはエクスのことをもっと知りたい!」

「え、エル! なんてことを怒鳴ってんだ?」

「ボクがいつもエクスに悪戯するのもエクスのことが好きだから! そんで…本当は…人間になってエクスを思いっきりハグしたい!」

 一呼吸おいて、エルは最後とばかりに思いっきり叫んだ。

「ボクは、エクスが、大・大・大・好きだ〜〜〜!」

 エルの唐突なる愛の叫びに一同は呆然とし、いち早く知ったヒューベリオンは思わず突っ込んでしまった。

『な、なんちゅー事言ってんだ女妖精! 俺様たちは今、戦いの真っ最中なんだぞ!』

そして、エルの本音を知ってしまったエクスは顔を真っ赤にしながら、思わずノリではっちゃけてしまった。

「お、俺達だけに恥ずい思いさせてたまるかッ! 七海、あんたもエルに続け!」

「え! あたしも?」

「どうせ心の声駄々漏れなんだからいっそぶっちゃけてまえ!」

「あ〜もう自棄よ! スニーフ!」

「何だ! 今は戦闘中「黙って聞く!」…了解」

「あんた…あたしがやばくなったときは何度もあたしを助けてくれたのよね。その…あんたにとっては一度、あたしの暴走を止める事が出来なかった。あんたを突き動かしているのはそれに対する償いなんだろうけど、あたしは気にしてない…むしろ嬉しかった! これからどんな事があっても、あたしがあんたを支えてあげるから…あんたはあたしを守って見せなさい!」

「な、七海…」

スニーフも、彼女の言葉に対する困惑と同時に、自覚できないモヤモヤを胸に感じていた。

 尤も、すべて聞いているヒューベリオンはもはや悶絶気味であった。

『ぬぉぉぉぉ! 今度はツンデレ風味かぁぁぁ!』

 のた打ち回っている様に見えなくもないヒューベリオンをよそに、七海までもはっちゃける。

「次、フォウリィ!」

「わ、私もですかぁ!」

「あたしも言ったんだから、あんたも白状しなさい! あんた好きなんでしょ! 彼が!」

「うぅ…分かりました!」

七海に背中を押され、フォウリィもあたふたしながら言うことに。

「は、ハガネさん!」

「…フォウリィ?」

「わ、私は…この学府に入って、再びあなたに御会いした時、ずっと不思議な感じをしていました。ですが、たった今、お二方の言葉を聞いて…気付いてしまったのです…!」

 フォウリィは一呼吸おいて、あがりつつも話し続ける。

「私は…貴方に…こ、恋して『でぇぇぃッ!』はうッ!」

突然の叫びにフォウリィの告白は強制終了してしまった。声を放ったのはいつの間にか立ち直ったヒューベリオン。

そしてヒューベリオンは全身全霊を持ってエクス達に突っ込んだ。

 

青春だからって大概にしろお前らッ!

 

精神的ダメージが猛烈に来る告白合戦にキレたヒューベリオン。そして本人は気づいた。

『あ、そうか。こっちの力を使わなければいいのか。よし、これで真面目に戦える…』

そう考えて、力の発動をやめた。それと同時に周囲で雑音のように響いていた心の声も聞こえなくなる。

これに気づいたのは…ノリで告白をやらせた後、冷静になってきたエクス。

「や、奴の力が切れてる間に、一気に叩くぞッ!」

その言葉に目が覚めたようで、六人全員が一斉に仕掛けた。

「本音を駄々漏れにさせるなんて、乙女の風上にも置けないわッ!」

 完全にキレている七海は、カードを取り出し、自分の周囲にて発動させる。

現れるは、無数の炎の槍。

炎槍の紋章(フランメシュペーア)…乱れ撃ちぃ!」

もはや炎の雨といっても差し支えない程の数がヒューベリオンめがけて降り注ぐ。

自分の力を封じていたヒューベリオンに、当然のごとく直撃し、爆風に包まれる。

『ぐわーーー! いきなり仕掛け…って外の声が聞こえないー!』

 冷静に考えれば気づくはずなのだが、二転三転とハプニングが起こったが故に、ヒューベリオンは完全に混乱していた。

 そこに、フォウリィも続いた。

「わ…私の告白を最後まで言わせなかったお仕置きですッ! 裁きの閃光!」

 聖術で唯一にして最大級の攻撃術…すべてを浄化する光を発生させ、ヒューベリオンに打ちつけた。

『眩しい! そして余計に熱いッ!』

術が得意な二人の猛攻に怯んだヒューベリオン。それをチャンスに、エルはエクス・スニーフ・ハガネに向けて超術を発動させた。

「みんなに、とびっきりのパワーを! フォース・ドライブッ!」

エルを中心に、全身から念の力が発せられる。その念の力の範囲内にいたエクス・スニーフ・ハガネはそれぞれに力がわくのを感じ取った後、いっせいにヒューベリオンに向かった。

「これで貴様を倒す!」

「…覚悟しろ!」

一気に肉薄したのはハガネとスニーフ。

スニーフは、二挺拳銃を撃ちながら距離を詰め寄り、そして腰に隠し持っていた散弾銃(ショットガン)を撃ち込んだ。それと同時に距離を離したと思いきや、今度はハガネが、持っている大剣の柄を伸ばし、長柄武器のようにして真っ向唐竹割りをかます。

 ヒューベリオンはすぐさま両腕で防ぐのだが、その重量の上にエルがもたらしたパワーが加わった太刀筋に耐え切れず、生々しい音がすると同時に腕もはじかれてしまった。

 そしてハガネが横に跳んだあと、ヒューベリオンの視界に移ったのは、猛スピードで突っ込んでくるエクスだった。魔法力を刀の刀身に練りこんで。

「これでキリだぜッ! 彗・星・剣ッ!」

 自ら編み出した零距離で衝撃波と共に斬り込む技。

その衝撃波によって、ヒューベリオンは本校舎の天井を突き破ってぶっ飛んでいった。

 

 終・報告と蛇足

 

こうして、突然に起こった学府の襲撃はエクス達の行動によってその元凶を討つ事に成功し、無事解決した。

ちなみに、敵がどうやってこの学府にやってきたのかというと、学府につながるブリッジを地道に歩いてきたらしい。まさか教師陣も正面から地道に近づいてきたのは予想できなかったのだろう。

そして、襲撃騒動が治まり始めてきた中、エクス達は表彰を受けることになった。

しかし、エルの開き直りを筆頭に起こった戦いでの告白合戦は学府中の噂の的となり、暫くエクス達は顔を赤くする日々を送る羽目になったのである。

この出来事は後に、「戦場で青き春を叫んだ学徒の物語」として後々に語り継がれるとかそうでないとか。それらの話はまたいつか。

「戦場ニ青キ春ノ歌ハ響クカ?」、終了


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